アイドルマスターシャイニーカラーズに登場するユニット「アルストロメリア」。
その名前を冠した楽曲「アルストロメリア」は、彼女たちのアイデンティティを象徴する一曲です。
特にサビに登場するフレーズ――
「チュチュチュ 幸福論誕生
アイデンティティ見つけた
アルストロメリアの花
咲いた 咲いた Silent Love」
初めて聴いたとき、この言葉に心を掴まれた人は多いのではないでしょうか。
軽やかなリズムの中に「幸福論誕生」という哲学的な言葉が現れる瞬間は、アイドルソングとしても異質でありながら、アルストロメリアというユニットの本質を見事に言い表しています。
この記事では、この「幸福論誕生」という言葉の意味を掘り下げつつ、歌詞全体の流れやアルストロメリアの花言葉との関係を考察していきます。
「幸福論」という言葉の選択
普通なら「幸せだね」「ハッピー」と表現してもよかったはず。
しかし歌詞はあえて「幸福論」と言います。
- “論”がつくことで、幸せは気分ではなく思想や定義に昇華する。
- サルトルやラッセルといった哲学者も幸福論を著しましたが、その多くは「矛盾や不完全さを抱えながらどう幸せを見出すか」がテーマでした。
「幸福論誕生」とは、アルストロメリアがただ幸せを歌うのではなく、自分たちなりの哲学を生み出した瞬間を指しているのです。
歌詞に描かれる“不完全さ”
サビに至るまでの歌詞は決して明るさだけではありません。
- 「気絶しそう しどろもどろ」
- 「まともな神経が繋がらない」
- 「ふくらむ蕾が傷だらけでも」
- 「ねじれた茎が不完全でも」
これらは弱さや矛盾の比喩です。
それでも「そばにいてくれますか?」と問いかけることで、不完全さを受け入れてくれる関係性が描かれます。
だからこそサビで「幸福論誕生」と高らかに歌える。
完璧だから幸せなのではなく、欠けを抱えたままでも共にあることで生まれる幸せが「幸福論」の中身なのです。
アイデンティティの発見
「幸福論誕生」に続けて「アイデンティティ見つけた」と歌われます。
弱さを抱えた自分を受け止めてもらえる瞬間、それは同時に「これが私たちの形だ」と実感する瞬間でもあります。
アルストロメリアにとって、幸福論の誕生=ユニットのアイデンティティの確立。
ここで彼女たちは「幸せとはこういうこと」と定義し、自分たちの存在理由を宣言しているのです。
Silent Love の二重性
サビの最後に繰り返される「Silent Love」。
- ひとつには「派手ではないけれど静かに咲き続ける幸せ」のこと。
- もうひとつには「声に出せない愛」、つまりアイドルとファンの間にある関係性のこと。
アイドルは直接「好き」と言えない立場でもあります。
だから「Silent Love」という表現は、ユニットとファンの間にしか成立しない静かな愛をも意味していると考えられます。
花言葉とのリンク
アルストロメリアという花には、次のような花言葉があります。
- 未来への憧れ
- 持続的な幸福
- 友情
- 献身
これを歌詞に重ねると:
- 「未来への憧れ」→ ユニットのこれからを照らす
- 「持続的な幸福」→ 静かに咲く「Silent Love」
- 「友情・献身」→ 「不完全でもそばにいてくれますか?」という問いかけ
花の意味と歌詞が有機的に結びつき、アルストロメリアの存在そのものが「幸福論」の象徴になっています。
対比で浮かび上がる幸福
歌詞には常に対照的な概念が並びます。
- ニヒリズム/ペシミズム ↔ 幸福論
- 傷だらけの蕾 ↔ 咲いた花
- ジャッジメント(裁き) ↔ Silent Love(受容)
このコントラストが示すのは、幸福は矛盾や不完全さの中からこそ生まれるという普遍的なテーマです。
「幸福論誕生」はその結論を象徴するフレーズなのです。
ユニットメタ構造としての「幸福論誕生」
アイマス楽曲は「キャラクターの歌」と「制作陣のメッセージ」の二重構造を持ちます。
制作側がアルストロメリアに託したのは「日常に寄り添う小さな幸せを歌うユニット」というコンセプト。
それを一言で示すのが「幸福論誕生」なのだと思います。
つまりこの言葉は、楽曲のテーマ宣言であり、ユニットの哲学宣言でもあるわけです。
まとめ:「幸福論誕生」が意味するもの
「アルストロメリア」という楽曲における“幸福論誕生”は――
- 不完全さや矛盾を抱えながらも、互いに寄り添うことで生まれる幸せ
- その幸せを自分たちのアイデンティティとして宣言すること
- 花言葉とシンクロしながら、静かに咲き続ける「Silent Love」の提示
これらすべてを凝縮した象徴的なフレーズです。
聴いていると「あなたにとっての幸福論はなんですか?」と問いかけられているような気持ちになります。
日常の中で見つける小さな幸せを大切にすること、それがアルストロメリアの提示する“幸福論”なのかもしれません。
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